2010年8月9日月曜日

キム・ドクスの伝統演戯「PAN(パン)」

演目にもあるキム・ドクスさんとは、韓国の伝統芸術を代表する「サムルノリ」の創始者であり、今まで50年もの間、韓国の文化芸術を自ら広めてきた方。彼が韓国伝統演戯の世界化のためにスタートさせたプロジェクトがこの「パン(PAN)」なんです。公演の内容は、韓国に昔から伝わる歌『パンソリ』、踊り『伝統舞踊、仮面劇』、音楽(打楽)のすべてを盛り込み、時代の流れに合わせて韓国の伝統・固有の味を生かしつつ、現代の公演スタイルを加味した舞台に仕上がっています。舞台で演じる公演者と客席に座っている観客が一緒に楽しめる、韓国ならではの公演芸術作品です。





第一幕.お祈り
昔から韓国では、公演の幕開けは芸人が歌い踊りながら会場に向かって行進するキルノリ(道遊び)だったそう。一行が通ると公演を見物しようとする人たちが集まり、芸人と観衆が広場に集まり楽しい時間を共有したとか。そんな昔ながらの雰囲気を演出するために、「PAN」でも幕開けはこのキルノリからスタート。続いて、 観客の幸せをお祈りするという意味を込め、歌や踊りなどを交えながら素晴らしい舞台芸術として昇華させたムソク(巫俗)を披露。これはとても幻想的な雰囲気で、なにか目に見えない『気』に吸い込まれそう。



第二幕. 一鼓和楽 (イルコファラク)

韓国には多様なリズム(チャンダン)と皮の打楽器があり、垂直に広がっている面から生まれる響きがまさに韓国らしい音、といわれているとか。力強い音を響き渡らせる大太鼓、左右の面を交差しながら軽快な音を奏でるチャンゴなど、この「一鼓和楽 (イルコファラク)」では韓国の大小様々な皮製打楽器によってダイナミックなステージが繰り広げられます。ズンチャカ、ズカズカ…この韓国のリズムはいっけん複雑そうですが、聴いていると思わず体が動いてしまう、あとあと耳と体に残る、そんなリズム。この舞台でも大太鼓、チャンゴ…と徐々に舞台に合流し、それぞれの打楽器の音とリズムを120%に満喫できるはず。演奏時間もたっぷりで、盛り上がり!



第三幕.パンソリ―「沈清歌(シムチョンガ)」

「東洋のオペラ」とも呼ばれるパンソリは、歌い手と太鼓叩きがペアになって民衆の哀歓を感情豊かに表現する韓国の伝統的な語り歌。今回の演目は「沈清歌(シムチョンガ)」。目が不自由な父に光を取り戻すために身を売った娘、沈清(シムチョン)が父の目を開かせるシーンを表現します。
普段内容が分からないと、せっかくの舞台を十分に楽しめない場合もありますが、こちらは簡単なあらすじの説明と字幕が日本語・英語・中国語で表示されます。この字幕を見ながら舞台を耳と目で観賞していると、ナビも思わずウルウル…。このストーリーと喉から搾り出すような歌声が調和して、見ている方も感情が高ぶります。



第四幕.三道農楽カラク(三道農楽のリズム)
「三道農楽カラク」は天の音や地のエネルギーなど自然の音を表現し、 世界中の人々を感動させたサムルノリの代表的な作品であり、「PAN」のハイライトともいえる音楽。雷の音を表すクェンガリ(鐘)、風の音を表すチン(どら)、雨の音を表すチャンゴ(杖鼓)、雲の音を表すプク(太鼓)の四つの楽器を通して、韓国人の興や調和、そしてエネルギーや躍動性を表現するとのこと。このパンは幕ごとにたっぷり披露してくれるのが特徴。特にこの第四幕はリズムと音の迫力に圧倒。



第五幕.喜怒哀楽

民衆の思想、生活、感情が込められている民謡は、長い間、民衆の間で受け継がれてきたもの。人々の生活を歌う単純な歌としてだけではなく、労働と密接に結びついた歌でもあるとか。こちらの「喜怒哀楽」では、「恨(ハン)五百年」や「舟歌」という歌を通して、民衆の悲しみと喜び、生きる楽しさを表現し、また伝統舞踊のサルプリ(巫女による厄払い)も交え披露してくれます。



第六幕.パンノルム(広場の遊び)
「パンノルム」とは広場で芸人と観客とが一緒になって楽しむ遊びのこと。第6幕では、今までの緊張感のあるステージとは打って変わり、一緒に楽しめる舞台になっています。仮面をつけた芸人によるコミカルな仮面劇(タルチュム)、小太鼓遊戯(ソゴノリ)、白く細長いリボンのついた帽子(サンモ)を被って踊るリボン回し(サンモノリ)、スリルと迫力に溢れる皿回し(ボナ)など、芸人たちがアクロバティックな技巧を盛り込んだ舞台が続きます。中でもナビがハマッてしまったのが、仮面劇。特に安東タルチュムは表情・しぐさなど見ているだけで、ぷぷぷっ笑ってしまいます。

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